世界観とは
本来の意味
世界についての考え方のことを指します。
世界そのものの価値や人間の生き方、自分がどうあるべきかなど、
人生観と似たような哲学的な意味を持ちます。
当たり前ですが、小説の書き方について解説していく当サイトでは扱いません。
創作における『世界観』について
作品世界を構成する設定のことを指します。
そのため、『世界観設定』『世界設定』などとも呼ばれます。
特に漫画やライトノベルの界隈では本来と違った上記の意味で解釈されている場合がほとんどです。
その設定内容を定義すると、
主として作品世界における舞台(場所)、用語、独自要素(事象・モノ・コト)、独自法則、価値観、常識、パワーバランスなどのことを指します。
作品によっては情勢、時代や歴史、生活などが重要となる場合もあります。
ここで羅列しただけでは不十分なため、以下で簡単な例を挙げて要素ごとに解説していきます。
また、当サイトではストーリーに関わる部分のみ設定を書き出すことを推奨しています。
ほとんどストーリーで関わらないのに世界の歴史を設定したりする必要はありません。
読者が読んで満足するような話を書いていきましょう。
主として重要となる世界観設定
大まかな概要
ジャンルなど、ベースとなる世界観の大雑把なイメージを書き出します。
この時点では深く考える必要はなく、主観的なもので構いません。
- 学園ラブコメ
- 現代ファンタジー
- SFコメディ
- 異世界ファンタジー
- ゲーム世界
舞台(場所)
登場人物が訪れたり生活したりとストーリーで関わる場所を作り込んでいきます。
最低限、主に舞台となる場所は丁寧に作り込んでおきましょう。
話の展開に広がりを持たせたり矛盾を予防したりするためにも、ある程度は考えておく必要があります。
ただし、教室に机が30台あって掃除用具入れにはホウキが7本にチリトリが2個…なんて設定は意味がありません。
ストーリーに関係ないのでホウキが10本あろうがチリトリが何故か無かろうが全く意味を成さないのです。
基本的にはストーリーで関わる予定の舞台設定を考えましょう。
以下は簡易的な例です。
- 全寮制で男女に寮が分かれている
- 男女別で3人部屋のはずだったが、主人公とヒロイン達は他の部屋に飽きがないため同じ部屋に
- 市内の山にある魔物の封印が何者かによって破られたため、街は魔物で溢れかえっている
- 市外の魔術師達により周辺地域が封鎖され、主人公達は取り残される
- 魔術研究施設では魔物の研究も行われていた
用語
当サイトでは、基本的に短く単純な意味であるものを用語と定義しています。
しかし最重要という訳ではなく、他の項目と被る部分もあるため、この項目は飛ばしてもらっても構いません。
作品世界における語句の意味や名前を羅列していきます。
現実世界では一般的な言葉だとしても、作品によって意味合いが違ってきたりするなんてことはよくあることです。
一般的な用語から独自用語まで幅広く書き出しましょう。
作者には分かっていても読者はそれを知る由もないので、
読者との行き違いを無くすためにも今一度、用語の意味と名前を確認すること自体に意味があります。
たとえそれほどストーリーに関わりがなかったとしても、ちょっとした配慮の欠如は作品全体の質の低下に繋がる恐れがあります。
- 金の単位『ゴルバー』
- 言語の名前『グリニーシュ語』
- 魔物『魔力を保有しすぎて凶暴化した獣のこと』
- 魔法使い『人間で魔力を保有している数少ない者のこと』
独自要素(事象・物・事)
当サイトでは、用語と違って意味が単純でなく、ストーリーに積極的に関わる事象などを独自要素と定義しています。
どちらかというと独自要素の方が重要です。
ストーリー上で密接に関わる独自的な要素はきちんと設定として書き出し、事前に考えておきましょう。
そうすることで矛盾点や間違いに気付きやすくなります。
オリジナリティの高い部分ほど粗が出やすいものなので、より注意深く作り込みましょう。
以下は簡易的な例です。
実際には書いていく内に芋づる式にストーリー候補なども上がって来ることも珍しくありません。
特に話の根幹となる独自要素の場合、膨大な文章量となることが多々あります。
- 気候、異常気象『年中を通して温暖な気候に恵まれているが、少し離れた砂漠の地域では常に竜巻が発生している。しかしここを通らないと周辺諸国へ出ることが出来ない』
- 呪い『集落の人々は全員呪われていて、生まれつき魔力が強い代わりに寿命が短い。そのように信じられてきたが、住んでいる場所から逃げ出した人は長生きしており、呪いそのものが何なのか定かではない』
- 魔石『生き物は死ぬと魔石に姿を変える。それには魔力が詰まっており、その特性によって様々な効果が現れた。そのため、より強い効力を求めて人殺しが横行している』
- 事件『連続殺人現場に残された証拠を辿って行くと彼女が犯人だったため、主人公は事件を隠蔽した。その数年後、彼女が自殺。しかし再び連続殺人が起き始める』
独自法則(エネルギー・パワー)
現実世界で言えば重力など、何かしらのエネルギーが関係したものの原理を定義します。
ここを疎かにしてしまうと矛盾が生まれたり、原理があやふやなせいで説得力に欠けてしまったりと良いことがありません。
何か特別な理由でもない限り、独自法則はきちんと定義して物語序盤で読者にも分かるように書いておきましょう。
また、以下のブラックホールの例でもあるように、法則そのものやその原理よりも、それによって何が出来るようになるのかを明確にすることが重要である場合もあります。
- 魔力『人々は空気中に含まれている魔力を体内に取り込んで利用している。取り込める量は修練によって多少は増減するが、本人の素養に大きく関係する』
- 超能力『詳しくは分かっていないが、脳が高次元を認識した結果によるものとされている。脳をコピーしてクローン化した場合、同じ能力を発現することからも肉体ではなく脳が関係していると思われる』
- 新たなエネルギー『ブラックホールからのエネルギー取り出しに成功して以降、半永久的なエネルギー源として資源問題が解決した。そのほか、小型ブラックホールの普及により大きな動力が必要となるものが気軽に利用できるようになり、飛躍的に技術革新が進んでいる』
パワーバランス
例えば『主人公は魔力保有量が多いから強い!』なんて設定があったとしても、
魔力が多ければどのようなことが出来るのか、そもそも一人当たりどの程度の魔力保有量が普通なのか、そして魔力保有量の多い人はどの程度の割合で存在しているのかなど、
周りと比べた具体的な説明がないと『実際にどのくらい強くてどのくらい凄いのか』という点が不明瞭になってしまいます。
そのため、パワーバランスが重要となってくるのです。
パワーバランスを定義し、どの程度の力関係であるか等の明確な判断基準を設定しておきましょう。
週刊少年漫画等でよく見られる、敵も味方もどんどん強くなっていく現象、いわゆる『インフレ』を防ぐ側面もあります。
以下は魔力に関するパワーバランスの例です。
基本的な役割から対抗策など、バランスに関係する事柄を挙げてあります。
- 魔力の基本的な役割『魔力を消費して思い描いたイメージを具現化することを魔法という。具現化の補助には呪文が使われることもある。』
- 魔力の源『異世界に住む人々の体内で生成されている。個人差はあるが、消費した魔力は時間と共に回復していく』
- 一人当たりどの程度の魔力保有量が普通なのか『最大でも火柱が出せる程度の魔力量が普通であり、小型の魔物なら数匹倒せる程度』
- 魔力保有量の多い人はどの程度の割合で存在しているのか『あまり多くはおらず、該当するそのほとんどの人が魔法騎士や魔物討伐のハンター、治癒士などの魔力を扱う仕事に従事する』
- 魔力が多ければどのようなことが出来るのか『魔物の群を一掃したり大型の魔物を討伐する等、一人で数十人にも及ぶ能力に値する』
- 主人公の魔力保有量『大型の魔物を複数体倒してもなお余力がある程度に多い』
- 魔力への対抗策『現実世界での警察のように、魔法騎士が領内を巡回し犯罪が蔓延らないように見張っている。犯罪者には魔力を吸収する効果の付いた手枷がはめられる』
- 魔力に次いで使われているエネルギー源など『魔法が一般化した今でも、少しの魔力で明かりや暖かさを持続できるため、ろうそくや石炭が盛んに使われている』
常識や価値観
作品世界における人や物に対する意識、つまるところ常識や価値観は現実と同じものが適用されるとは限りません。
昆虫を食べるのが普通だったり、幻覚作用のある植物を嗜むのが当たり前、性交渉は幼少期から、寿命は30年でも長い方、などなど…
むしろ現実と違った世界観であればあるほど、違ってくる方が自然であるとも言えます。
このような認識の違いは世界観を色濃く演出してくれるため、必要であれば常識や価値観を設定してみましょう。
- 脳のネット移植やバックアップ技術の一般化により死という概念が無い
- 性の自由化により男女の別け隔てが無くなったため、裸で過ごすのが当たり前
- かつての戦争により地球が汚染されたため、外出には防護服が欠かせない
- 魔法の使えない者には手を差し伸べ、手助けを行うのが当然とされている
作品によっては重要となる世界観設定
情勢
情勢とは絶えず変わっていく物事の状況を示したものです。
世界は常に変化しています。
世界観設定としての『情勢』は必ずしも必要というわけではありませんが、
情勢を描くことで作品世界のリアリティが増したり、ストーリーの幅が広がることが期待できます。
情勢にも色々あります。
おそらく多くの人が想像するであろう国と国同士の情勢はもちろん、
種族間での情勢、宗教などの思想団体、ギルドにおける冒険者パーティ同士の情勢、
はたまた、部活動における場所取り問題や女子と男子、SFにおける資源問題、などなど。
いずれも共通して言えるのは、状況が変化する可能性を孕んでいる点です。
たとえ結果的に変化しなかったとしても、そのような可変性を作中に取り入れることによってストーリーに起伏が生まれます。
面白くなるのであれば積極的に取り入れましょう。
ただし、情勢は間違えると矛盾が出たり収拾がつかなくなる可能性もあるので、それに関しては注意が必要です。
世界観設定として考える場合、出来れば変化する点についても考えてしまった方が良いかもしれません。
- SFにおける資源問題『宇宙船内のみでの資源生成に限界が見え始めてきたため、人体を改造して低エネルギーで活動できるようにするか、能力の低い者を処分して人口を減らすかの二択に迫られた。究極の二択によってついに争いが生まれるも、宇宙船そのものの故障によって航行が困難になり、付近の惑星に漂着することになってしまう』
- 冒険者パーティ同士の情勢『報酬の高い依頼は実力のあるパーティが一番に受けることが暗黙の了解になっていた。それに反発した主人公達は実力あるパーティと対立し、依頼を受けてしまう。大怪我をするもなんとか依頼はこなした主人公達。それを知った実力のあるパーティから嫉妬されるかと思いきや、心配された。有名パーティは報酬を独り占めしているように見えたが、難易度の高い依頼から弱い者を遠ざけている意味もあったのだ。これを期に主人公達は改心し、分不相応な依頼は受けないと約束し和解した。この様子を見た冒険者達は、実力あるパーティをより尊敬するようになった』
- 部活動における場所取り問題『いつもはサッカー部がグランドの大半を占領している。そのため主人公が立ち上げた野球部の練習する場所は少なかったが、本気で甲子園を目指す姿にサッカー部も同じ運動部として思うところがあった。練習場所で揉めていた両者だったが、いつしか互いを応援するようになり、練習場所は平等に分担することとなった』
時期や時代、歴史(経緯)
正直言って、世界観設定の中でも特に『歴史』に関しては初心者が暴走させてしまいやすいため、あまり重要視すべきではありません。
上の方でも似たようなことを言いましたが、ストーリーで使う設定だけを考えましょう。使いもしない設定に意味などありません。
時期、時代、歴史、いずれも作品世界においては過去や現在との比較になることがほとんどなので、
対比や違いによる変化などを元に書いていきましょう。
下記は簡易的な例です。
- 時期で言えば季節、イベント、新入生が来る時期など。
- 時代で言えば疫病が流行っていた時代、失われていた技術が使われていた時代、仮想ディスプレイが実用化されていなかった時代など。
- 歴史(経緯)で言えば国の成り立ち、主人公と幼馴染が恋人になる経緯、地球に住めなくなった経緯など。
生活
そもそも創作物は現実と違うものを楽しむという側面もあるので、あまりに生々しすぎてもかえって現実的でいまいちな評価を受けることになってしまいます。
極端な話、主人公が異世界で魔物とバトルするよりも食料調達や病気や怪我に四苦八苦してばかりだと楽しめるものも楽しめません。
生活に関する世界観設定はそのバランスが重要です。
適度な非現実感を演出することが出来れば、よりいっそうに作品世界が魅力的になります。
生活に関する要素は多分に存在しています。
衣食住
食べられるもの、主食、住む場所や家の造り、服の素材など。
文明レベル
特に文明の違いが顕著となる主要エネルギーやライフライン、社会制度などに注目しましょう。
- トイレや水道は整備されているのか
- 主要エネルギーは魔力なのかそれとも石油や石炭なのか
- 医療は発達しているのか
- 盲目などの社会的弱者はどうなっているのか
- 都市は発達しているのか
- 文字は普及しているのか
- 芸術などを嗜む文化はあるのか
- 犯罪やそれに対する防止策は施されているのか
ライフサイクル
特に重要となるのがこのライフサイクルです。
作品世界において人生がどういう流れなのかを指し示すものとなります。
ライフサイクルは登場人物の常識や価値観の形成などにも関わってきます。
- 学校教育はあるのか
- 酒はいつから飲めるのか、それとも禁止されていないのか
- いつからが大人なのか
- 職業は自分で決められるのか
- 寿命は何年なのか
- 子どもは何歳で産むのか
- 病気や怪我、犯罪などで死ぬ人はどれくらい居るのか
- 親の居ない孤児はどれくらい居てどれだけ生き残るのか
ランドマーク
ランドマークとはその土地においての目印または象徴となるような物のことを指します。
住む場所には何かしらの特徴があるものです。
ぶっちゃけランドマークは無くても支障はありませんが、
有ればあったで非現実感を演出するポイントにもなり得ます。
- 街のいたる所に水路があり、せせらぐ音が常に聞こえている
- 魔法の光の電灯が浮いていて幻想的な風景
- 都市部の中央に見上げても先が見えないくらい高さの建造物がある
発展的な世界観設定
ここでは、設定することによって作品世界の幅が広がるものを解説していきます。
無闇に広げても意味はないので、必ずしも設定すべきではありません。
問題や障害を設ける
さきほど上で挙げた『情勢』の項目と被っている側面はありますが、ここで個別に解説していきます。
一見すると平和な世界でも、様々な問題や障害を抱えているものです。
そこに焦点を当てないという選択肢もありますが、
それらには多種多様なストーリーが生まれる可能性を秘めています。
解決に向けて動くも、放棄して逃げるも自由です。
問題や障害があるだけでキャラの行動原理が明確にしやすいといったメリットもあります。
解決に向けて動いたとしても、解決のするしない、はたまた悪化や何も変わらない等といった展開の選択も作者の自由です。
このように、世界観設定で問題や障害を設けるということは、単純にストーリーの選択肢が増えることとなります。
- 国家転覆を目論む者や組織
- 不作など食糧に関する危機
- 河川などの水源の汚染
- 隣接国とのにらみ合い
- 貿易の行路が危険地帯を通る必要がある
- 疫病
- 宗教等の思想の違いによる反乱や迫害
- 魔女狩り
- 人さらい
- 孤児
- 人種差別
- 人に害をなすモンスター
変わった世界観設定
変わったところでは『主人公の年齢が変わらない』などのご都合設定も世界観に含まれます。
これは『サザエさん時空』とも呼ばれており、クリスマス等の季節ネタも行うが、
年齢を上げてしまうと作品構造に大きく影響が出るために回避したものとなります。
ご都合設定に分類されるものではありますが、比較的受け入れられやすい傾向にあります。
異世界で何故か通じる言語などもこれに分類されます。