もくじ
これまでのおさらい
ここは『Level:04 世界観設定の軸となる重要なバランスを決める』です。
前回は世界観設定テンプレートシートを活用し、世界観を広く具体的に考えることに注力しました。
次は狭くピンポイントに考えていきます。
この記事では世界観で特に重要な3つのバランスについて詳しく解説していきます。
また、まとめ記事に沿って順序立てて世界観の作り方を解説していますので、
まだ見ていない方は以下のまとめ記事を先に読むことをおすすめします。
世界観設定で重要な3つのバランス
世界観設定テンプレートシートである程度は考えてもらったと思いますが、
前述した通りこの記事では以下の3つのバランスそれぞれについて踏み込んでいきます。
- 常識や価値観など世界観のリアリティ
- 独自要素とそのバランス
- 独自法則とパワーバランス
これらがあやふやだと世界観そのものの説得力やリアリティに欠け、途端に違和感が目立ってしまいます。
また、ストーリーに大きく影響を与えるのもこれら3つそれぞれのバランスです。
そのため、世界観設定の中でも特に注視して製作していく必要があります。
非現実すぎても都合が良すぎても面白くありません。
適切なバランスを意識してください。
しかし実は現代ものだとこれらの配慮は全く必要なかったりもします。
現実の世界と違う設定が作品に大きく関わる場合に、これらの配慮が必要になってくるのです。
自分の作品がそうでない場合、この記事は飛ばしてもらっても構いません。
以下でそれぞれを詳しく解説していきます。
いずれについても言えるのが、『かなり具体的なことまで考えないとバランスが分からない』という点です。
① 常識や価値観など世界観のリアリティ
一部の世界観設定はただ思い付いただけでは意味がなく、そのままではリアリティや説得力に欠けてしまいます。
特に常識や価値観などの世界観設定は小さなエピソード等を考えた方がリアリティを演出できます。
解説は後述していきます。
「自分の利益を優先することが当たり前」という価値観の世界の場合
例えば「自分の利益を優先することが当たり前」という価値観が横行している世界の場合、以下のような展開が考えられます。
『モンスター討伐のために主人公と異世界人がチームを組んだら、利益を独り占めしようとした異世界人に主人公が殺されかける』
…と、こんなエピソードなら設定から簡単に考えられます。
常識や価値観などの世界観設定の一例として書き加えることが推奨されます。
ですがこれだけでは不充分です。
ただの一例だけを見て、常識や価値観とは言い切れません。
たまたま運が悪く、同行者が変人だっただけかもしれません。
その可能性が拭いきれない以上、「自分の利益を優先することが当たり前」という価値観の説得力は薄れてしまうでしょう。
もしそのような世界観であれば、例えば以下のように利益を優先とした行動に何度か巻き込まれたりしてもおかしくありません。
- 主人公に都合のいいヒロインが現れたかと思いきや寝ている間に金を奪って失踪
- 馬車に乗った老婆が親切に都市部まで乗せていってくれることになるも、連れられていった場所は盗賊のアジト
殺されるか仲間になるかを選ばされる 呼び止められて店に入ったら高額な請求
- 悪いことをしても都市の警備を担う騎士に金を渡せば有耶無耶にしてくれる
個人の依頼を受けたら報奨金を払ってくれない
解説
『常識や価値観』とまでになっているということは、その世界の人々は日常的にそれと密接に関わり合っています。
設定するからには複数のエピソード等をストーリーに絡める前提で考える必要があります。
単純に一例だけでは説得力に欠けた薄っぺらい世界観になってしまうという問題もあります。
上でも言ったように「偶然」という可能性もありますし、
なによりそういう世界観だと演出しておきながらそのような展開がそれ以降は何もないなんて作品は、バランスが悪く非常に杜撰です。
世界観は設定としてだけではなく、その世界で生きる人々のことを考えましょう。
そうすることでリアリティを獲得し、説得力が生まれます。
余談:設定は作るだけでは終わらない
さらにこのような価値観のある世界観になるとまず、主人公は何から何まで疑うようになります。その世界に居る人々もそうでしょう。
人々の心には疑心暗鬼が巡っており、利益のための殺人や不正が蔓延しているかもしれません。
私達の知っている世界とは根本的に何もかもが違っている世界であるかも知れないのです。
こうやって設定により新たな設定やストーリーが生まれていくという観点も見逃せません。
設定はただ作るだけでなく、作った後はストーリー等にどのような変化がもたらされるのかを考えることも重要です。
想像力を働かせてどんどんオリジナリティのある世界観を作っていきましょう。
② 独自要素とそのバランス
当サイトでは世界観における独自要素のことを「ストーリーに積極的に関わる事象・物・事」と定義しています。
これも先述したようなことと同じで、ただ設定を作っただけでは意味がなく、
『どのようにストーリーに関わるか』に重きを置いて作り込んでいく必要があります。
また、それに伴ってバランスも重要になってきます。
一言では説明できないため、下記で例と共に詳しく解説していきます。
独自要素として『魔石』を考える場合
例えばストーリーに大きく関わる独自要素として『魔石』を設定したとします。
『生き物は死ぬと魔石に姿を変える。それには魔力が詰まっており、その特性によって様々な効果が現れた。そのため、より強い効力を求めて人殺しが横行している』
これは以下の記事(世界観の意味とは?)で簡易的な例として挙げた設定ですが、あくまでも簡易的でしかありません。
作中でどのように扱っていくのかを具体的に決めなければ、いかようにもバランスが崩壊する可能性を孕んでいます。
- そもそもの魔石に姿を変える瞬間について言えば、どのような経緯を経ていくのかが分かりません。
死んだらすぐに光と共に魔石になるのかもしれませんし、時間をかけてゆっくりと魔石になっていくのかもしれません。 - 形だって分かりません。
石ころサイズになるのか、それとも姿形はそのままに石のようになるのか。 - 魔力がどれくらい詰まっているのかも分かりません。
- それにもし、人々の生活に魔石が欠かせないのであれば、採取と資源の確保が問題となります。
- モンスターを討伐してそれを生業にする人も居れば、
効率を考えると魔石を専門で畜産農家をやっている人だって居るかもしれません。
需要と供給がどれくらい存在しているのかも重要です。 - 『より強い効力を求めて人殺しが横行している』とするならば、
どのような用途で求めているのかも重要となります。 - しかし日常生活程度では強い効力など必要がないはずです。
それだと横行するほど必要とは思えません。 - 仮に強い人ほど強い魔石になるのであれば、そもそも殺すのが難しい上に、そんな強い人は少ないでしょう。
- となると、この『人殺しが横行している』という部分の設定はボツにした方が良いかもしれません。
- 使うにしても「戦争に使うために強い魔石を求め、敵国の暗殺者が~」などでストーリーに絡めると面白いかもしれません。
その上で、さきほど挙げたような魔石と世界との関わりの設定をストーリーに絡めていけば世界観を演出できてそれなりのものになるかもしれません。
解説
このように、独自要素はストーリー上でどのように扱っていくかを具体的に決めなければ、様々な懸念や可能性が浮かび上がります。
すると結果として世界観のバランスも不明のままであり、不安定なものとなってしまいます。
「考えすぎだ」というふうに思うかもしれません。
しかし、少しでも良いので具体的に考えておかないと、思わぬ矛盾や作り込みの甘さが生まれてしまうことだってあるのです。
例で言えば特に『なぜ強い魔石を求めるのか』という点。
これには動機が必要なのは勿論、強い魔石になってくれる強い相手も必要です。
さらに言えば使い方も考える必要も出てきますし、強い魔石の相手などとはストーリー上でどのように関わるのかも考えなくてはなりません。
世界観設定から逸脱しているように見えるかもしれませんが、
これら関連することまで含めて独自要素を考え、しっかりとバランスを意識していきましょう。
何よりも重要なのは新たな発想が生まれる点
また、考えていく過程で「魔石の畜産農家」のような面白い発想が生まれることも多々あります。
他にも、「魔石が石ころサイズだったら加工なしに手に入れたらすぐ使えるため、バトルがメインの話に持ってこい」だとか、
はたまた、「姿形がそのまま石になるのであれば、持ち運びや加工に苦労する。しかし、魔石職人などの特殊な職業を設定し、世界観を演出する糧に出来る」など、
この記事を書きがてら適当に考えただけでも多数思い付きます。
特に独自要素をメインに据えて作品を作り込む場合はバランスを意識するだけでなく、
このように新たな発想を思い付くことも心掛けて忘れないようにしましょう。
③ 独自法則とパワーバランス
独自法則
例えば電気があるのと無いのとでは決定的に人々の生活に違いが出てきます。
照明はランプに代用され、電車は蒸気機関車に、そしてスマホやPCは存在すらしてないでしょう。
このように、何か独自的な法則を定義すると、それによって様々な事柄が影響を受け、世界のバランスが変化していきます。
以下で具体的な例と共に解説していきます。
半永久的なエネルギー源としてのブラックホール
『ブラックホールからのエネルギー取り出しに成功した』という独自法則の例です。
まず「半永久的」とのことでエネルギー資源の問題が解決します。
小型ブラックホールが普及すれば、大きな動力が必要だったものが気軽に利用できるようになるでしょう。
しかし良いことばかりではありません。
事故が起きると大惨事になる可能性があります。
その他にも様々なことが考えられます。
- 小型のものでもかなりのエネルギー量を内包しているということは、テロ行為などの犯罪にも悪用される可能性があります。
それに伴って法律も変わるかもしれませんし、そもそも認可性になるかもしれません。 - そもそも、そのような危険なものを実用化するのはリスクが有りすぎます。
そうなると、何らかの陰謀だとか説得力を与えるための設定が必要になる可能性。
(設定のための設定) - 他にも今までは不可能だったことが実現可能となるでしょう。
- コストが掛かりすぎるために不可能だった個人での発電設備の保有がデフォルトになるかもしれません。
- 単純にやれることが増えて生活が豊かになり便利な暮らしが訪れるかもしれません。
- はたまた、事故などの問題ばかりで速攻で禁止になる可能性もあります。
そうなっても違法に使い続ける人々が現れたりするかもしれません。 - 一方で、ブラックホールという新エネルギーによって火力発電や原子力発電の立場が危ぶまれる可能性もあります。
解説
独自法則を作る場合、それによってもたらされる影響や必然性、パワーバランス等を考えましょう。
問題点はさきほど解説した独自要素の件と概ね同じです。
作中での扱いをきちんと具体的に決めなければ、世界のバランスが定まりません。
独自法則はその傾向がかなり強く、ちょっとしたことで矛盾が生まれたり、
リアリティや説得力、現実感の無さが浮き彫りになってしまいます。
例で言えば「そもそもそんな危険なものが実用化されるのか?」という点がまさにそうでしょう。
小型であり、とてつもないエネルギーを有しているともなれば、少なからず悪事に使われない理由も見当たりません。
ここまで解説してきた中でも特に、この「独自法則」に関しては作中で一貫した設定とバランスが求められます。
途端に違和感を感じてしまわないよう気を付けて作っていきましょう。
パワーバランス
上で解説したように独自法則そのものも重要ですが、独自法則のパワーバランスも世界観にとっては極めて重要です。
これに関しては以下の記事(世界観の意味とは?)で解説しているため、ここでは詳しい説明は割愛します。
簡単に言えば力関係です。
例えば「強い」と言われても、「具体的にどういう理由でどう強いのか」「他と比べたらどうなのか」というパワーバランスが明確に分からないと読者は理解に困ってしまいます。
まとめ
今回はここまでとなります。
この記事では世界観で特に重要な部分に焦点を当て、考えていきました。
次回は世界観を作る上で注意すべきことについて解説していきます。
世界観の作り方もいよいよ残り2記事となり、終わりが見えてきました。
是非とも最後までお付き合いください。