世界観設定は基本的に説明すべきではない
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世界観設定は基本的に説明すべきではない

基本的にはエピソードを交えたりする等して、ストーリーの中で自然に見せていくことがベストです。
作中で説明を行うにしても短めにすることを心掛けましょう。

また、いわゆる「説明セリフ」等はテンポが削がれたり違和感が生じてしまうので避けた方が無難です。
設定ばかり羅列してしまうのもNGです。

以下で順序立てて解説していきます。

世界観設定の書き方の注意事項など

まずは何に気を付ければいいのかを解説します。

① 大前提として読者は設定が読みたいわけではない

設定を読むのが好きな人も居ないわけではありませんが、
大前提として読者が読みたいのはストーリーです。

小説は資料集でも説明書でも無いため、設定の羅列は止めましょう。
過剰に設定を多用する、いちいち設定を長文で説明する等もテンポが悪くなるため良くありません。
特に独自用語を多用するとパッと見で意味が分かりません。

以下のようなものが推奨できません。

駄目な説明の仕方の例など
  • 冒頭でひたすら世界の歴史を延々と語る
  • 頻繁に新しい設定が登場し、その度に長い説明を入れる
  • 「セクト化が進行してファルス期に移行したがセグメタで留まってくれたおかげで助かった」等の独自用語の多用

解説

最初に述べた通り、基本的にはストーリーの流れで描写するなどして見せていくのがベストです。
何事にも適切な分量がありますので、もしも冒頭で歴史を語るにしても新しく出た設定の説明をするにしても、
長くなりすぎないよう短めにすることを推奨します。

② 設定は一度に全て開示する必要はない

先程も言ったように、何事にも適切な分量があります。
一度に説明してしまう必要はありません。
そもそも情報が多すぎると分かりにくいため、読者が容易に理解できる量で書きましょう。
ストーリーの流れで適切に小出しにした方が読者への負担も減ります
それについてはページ下部で参考例と共に解説します。

また、余談ですがむしろ不明な点(謎)は適度に残したままの方が読者の興味を惹ける場合もあります。

そのほか、説明を急ぐあまり「説明セリフ」になってしまうのも避けるべきです。
例えば以下のようなケースです。

説明台詞の例
  • ①「もうすぐ魔力検査の時期ですね」
    「そーですねえ。なんてったって他の都市だと魔力を魔石に込めて提出するだけなのに、魔術都市セルレタの魔術検査は特殊な魔石に魔力を込めたり魔道具を使って実技をしたりと大変なんですよねー」
  • ②「す、すごい…魔力が尽きて絶体絶命かと思いきや、実は直前に相手の魔力を吸収するための魔術を仕組んでいて、それに全ての魔力を使っていたんだ!」
  • ③「ここが宇宙空港かあ…! 政府の承認の無いワープが違法化されてから30年、ワープは履歴を厳正に管理されるようになりましたが、未だに違法ワープは絶えないとも聞きます。それでもまだこんなに賑わっているんですね」

解説

これらの説明セリフは会話として通じてはいるのですが、ぎこちないことに変わりはありません。
違和感の原因になるのでなるべく使わないようにしましょう。

実際にストーリーの流れで設定を描写した例

いよいよ本題となります。
設定は説明するよりも実際にストーリーの流れで描写した方が臨場感も生まれますし、読者の感情移入も容易くなります
以下で例を挙げて解説します。

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悪い例
  • 「ここは…どこだ?」
    目が覚めると俺は見たことのない手術台のような所で横たわっていた。付近には女が居る。
    「ここは移動式シェルターRZ-15。過去の大戦による汚染物質の影響で普通には住めなくなったの。外に行くには防護服が必須。
    あれ以降、生き残った人々は内乱や略奪で人口を減らしていった。
    ここ数年は誰も見なかったけど、私以外に人を見たのは初めてよ」
    「…」
    「実はこのシェルターのエネルギーが枯渇しそうで、そんな時に稼働している他のシェルターを見付けたの。
    当初は燃料を分けてもらおうと思って来たんだけど、生きている人は誰も居なくて…
    冷凍保存されたあなただけが居たわ。かなり時間が経っていたから無理だと思っていたけど、こうして会えて嬉しいわ」
良い例
  • 「ここは…どこだ?」
    目が覚めると俺は見たことのない手術台のような所で横たわっていた。付近には女が居る。「ここは移動式シェルターRZ-15よ。冷凍保存されているあなたを別のシェルターで見付けたから連れてきたの」
    「俺以外にも人が居たはずだ」
    いつかは分からない…が、かなり時間が経っている感じがする。だとすれば一刻も早く家族も冷凍保存から目を覚まさせないと生命が危ない。気付けば俺はふらふらとしながら部屋の出口に向かって歩いていた。
    「待って、あなたは治療が必要よ。まだ精密検査の結果も出ていないし、長期間冷凍保存されていたんだからしばらくは安静にしないと」
    「どいてくれ。時間が無いんだ。俺には家族が居る。元居たシェルターに行く」制止する名前も知らぬ彼女を振り切ろうとするも、
    「外に行くには防護服が必要なの! 過去の大戦で汚染物質が蔓延してて、それに…」
    衝撃的な事実だった。彼女の言葉がうまく耳に入って来ない。俺が冷凍保存されたのは戦争が起きると言われていた前だ。末端の軍人である俺は万が一に備えての冬眠計画に家族揃って従事していた。他の軍人やその家族も含めて数千人規模で。
    「今は何年だ?」
    「西暦2438年よ」
    俺が生きていた頃は2333年だ。色々と節目の年だった。やはり軽く百年は経過していたようだ。
    「シェルターの番号をもう一度言ってくれ」
    「RZ-15」
    「RZ…聞き間違いじゃなかったんだな。俺が生きていた頃はEZまでしか移動式シェルターは製造されてなかった」
    「それと…残念なお知らせだけど、あなた以外にも冷凍されていた痕跡のある人は居たわ」
    「良いお知らせじゃないか」
    「違うの。エネルギーが切れかかってて冷凍が不完全だったから、勝手に解凍されててあなた以外は…」
    「もういい、そこから先は、いい」
    俺は頭を抱えながら彼女の言葉を遮った。聞くまでもなく予想はつく。
    「俺の居たシェルターは動きそうだったか?」
    「いいえ、燃料も分けてもらうほども無かったわ。あなたが生きているのも奇跡なくらいに」
    「そうか…」
    おそらく、俺より先に目が冷めた人々はリスクを考えて冷凍保存から目を覚まさせる人々を制限していたんだろう。その方が消費も少なくて済む。
    そして、何かがあってシェルターが動かなくなった。
    その時に俺たち家族は取り残されたんだろう。そして俺以外は…
    何はともあれ、状況を確認したい。
    「どんな事が起きた? お前以外に人は?」
    「大戦で生き残った人々は移動式シェルターで暮らしていたの。でも、資源不足が深刻になって内乱や略奪で確実に数を減らしていったわ。
    ここ数年は誰にも会ってなかったからあなたに会えて嬉しいわ」
    「ははっ既婚者だがそりゃどうも。
    ところで名前は?」
    「私はミジェルダよ。よろしく」
    「俺はへイグス。よろしく頼む」

解説

悪い例と良い例では内容も少し違っていますが、
一度に説明してしまうよりもエピソードを交えてストーリーで描写していった方が理解しやすいのが分かるかと思います。

説明不足にも注意

説明は全く必要ないという訳ではなく、必要なところには適切に配置する必要があります。

この辺りは作品や書き方による部分が大きいため、一概には言えないのですが、
少し難解な設定は章や節が変わったタイミングで一度は軽く説明し直す、くらいが無難じゃないかと思います
回数が少ないのであれば出てくるタイミングでその都度、説明してしまうのも悪手ではありません。

独自用語の意味を読者が忘れたまま話を進めてしまうと、ただそれだけで読者は置いてけぼりを食らってしまいます。
そうなるとストーリーの意味や意図が分かりづらかったりして全体的に理解が進みません。

これは読者の記憶力などの問題ではなく、作者側の裁量による部分が大きいため、
読者への配慮はいつ何時も忘れないようにしましょう。

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