もくじ
メタフィクションとは
メタフィクションとは、物語の登場人物が作者や読者などの高次元の存在を知覚しているという状態のことを指します。
「メタ」が「高次の」「超越した」という意味を持っています。
すなわち、フィクションを超越した状態全般でこのことが言えます。
例えば作中での「もう残り5ページしか無いぞ!? はやく話を終わらせないと」だとか「ちょっと読者サービスしちゃおうかしら」といったセリフがメタフィクションに該当します。
また、様々な呼び方があり、メタネタ、メタ発言、単にメタとも呼ばれることがあります。
近年だとメタフィクションは小説のみならず、アニメやゲーム作品でも多く見受けられます。
メタフィクションの注意点
興醒めしてしまいやすい
メタフィクションのデメリットとしてまず一番に挙げられるのが、現実を思い出してしまうところにあります。
特にギャグなどでの使用は笑いから一転、現実に引き戻されてしまって思うように楽しめないという観点があり、
メタフィクション、特にメタネタが嫌われる理由はこれに起因するものだと思われます。
説得力が必要
また、メタフィクションは説得力を持たせるのが困難です。
例えば作中で「ある問題を解決するために神様を探しており、その結果として高次元の存在である読者が見つかった」とします。
そしてそこから「読者の協力によって問題が何とかなった」とします。
一見なんでも無いように思えますが、メタフィクションの許容とは言わば「何でもあり」の許容と同義です。
極端な事を言えば「作者を出してラスボス倒す」ということだって可能なのです。
それでは面白くもなんとも無いし、読者が納得するはずもありません。
このような説得力の欠如を防ぐため、
メタフィクションを軸に据えて扱う場合はかなり序盤から行うか、作中に布石や伏線を散りばめておく必要があります。
「何でもあり」を防ぐため、いっそのこと高次元の存在でも解決しないというのも手です。
コメディ調にしてしまうのも悪くありません。
その辺りについては次の見出しで解説していきます。
メタフィクションの使い方 具体例と共に
解説はそれぞれ後に行います。
例A
- 彼女はずっと誰かに見られている気配がしていた
- 序盤でクラスメイトの一人が魔法使いと判明。たまたま悪い魔法使いに襲われていたところを助けてもらう
それ以降はずっと平凡な日常 - ある日、文章が書かれたページの切れ端やイラストが見つかり、そこには自分のことが書かれていた
どう考えてもカメラなどは無いのに、プライベートなことが書かれていたりするので不気味に思う
神様の仕業と疑うが、いやそんなはずはないと思い直す - 警察に相談するも嫌な顔をされる
「この世界にはたまにこういうのが紛れ込むんだよ。気にしないほうが良いよ」と相手にしてくれない - ついに小説の本を見つけてしまう
また警察に相談。すると警察が真実を話し始める
「あなたも俺も主人公じゃないから言うけどね、ここは小説の中の世界なんだよ」
「嘘だ…そんなはずが…」
「あなたの言うストーカーってのもね、見てくれてるのは読者のことだよ」
「この世界に現実のものが紛れ込むのはたまにあるんだ。普通は気付きもしないんだけど、たまにアンタみたいなのが居る」
「それに本当の主人公はクラスメイトの男の子だよ、魔法使いの」
「そんなの…耐えられない」
例A解説
彼女は実は小説の世界の中のキャラクターに過ぎません。
「ずっと誰かに見られる気配がしていた」という点だけだとその後のメタフィクションにおける説得力に欠けるため、
主人公らしきキャラの登場や、他にも居るメタフィクションを知覚しているキャラ(警察)を出して説得力を高めています。
ここからの展開は割りと自由になります。
狂って主人公もといこの小説の世界を破壊しに回るのも結構、
読者さえ居なければと現実世界に鑑賞して読者を殺戮しに行くのも結構、
そもそも作者が居なければ…などなど、ご想像にお任せします。
例B
- ある問題を解決するために神様を探しており、その結果として高次元の存在である読者が見つかった
- 読者の協力によって問題が何とかなった
- 読者を作中に呼んだ時点で高次元の存在ではなくなってしまい、解決が困難に
- 最後は現在の読者(いま読んでいる人)に語り掛けて協力してもらい問題を解決
- ここは気まぐれで作者が書いた小説の世界アクラシア
ネットに上げられたものの、放置されたせいで結末は永遠に訪れず、魔物たちの驚異やあらゆる問題ごとは未解決のままだった
住民達は困り果てていたが、ある時こんな小説を読んでくれる読者が現れた
- 読者の介入によって問題が解決
しかしキャラが読者の好みに改変されており、全キャラ貧乳になったり特定のキャラが優遇されてヒロインが変わったりしてしまう - もはや原型が無いほどにぐちゃぐちゃになった結果、ようやく不審な動きに気付いた作者が現れて全て元通りに書き直されていった
皆の記憶からも消え去り何もなかった事になって終了
いつの間にか1から書き直されて完結し、問題も解決してしまう
例B解説
例Bは上の方の説得力うんぬんの見出しで挙げた例です。
例B1は読者を呼んだものの、一度は解決せず「何でもあり」感を緩和しています。
例B2は序盤からメタフィクションであると明示した状態で始めることで、後々の説得力などの問題を回避しています。
最初からそういう物語であると分かればその辺りの問題は無くなります。
例B3は「何でもあり」ということ自体は変えず、それによって結果的にとんでもないことが起きるという展開にしています。
結果的に解決するのですが、その展開があったために説得力やご都合感が緩和されています。
まとめ
メタフィクションは作者の技量が問われるだけでなく、上手く扱うとかなり馬鹿げた面白い話も作れます。
興味があればそんな作品も作ってみてはいかがでしょうか?